JLPT N2・N5語彙 – 「危ない」と「危うい」の違い

目次
1. 「危ない」と「危うい」の違い
2. 危ない
3. 危うい
4. 比べてみよう
5. まとめ
6. クイズ
7. 関連記事
8. コメント
Q: 「危ない」と「危うい」は違う意味ですか?
A: はい。どちらも危険を表しますが、「危ない」は目に見える危険に、「危うい」は成否や存続の不安定さに使われます。
危ない (JLPT N5)
[意味]
① 結果として悪いことが起こりそうである
② すぐにダメになりそうな状態である
③ 将来の見通しがよくないこと
④ 信頼性が低く、不確か・不明瞭であること
⑤ 状況が不安定で安定感がないこと
[例]
夜道は危ないよ。(①)
The street at night is dangerous.
祖母の命が危ないから、覚悟しています。(②)
My grandmother’s life is in danger, so we’re prepared for the worst.
このまま円安が続くと日本の経済は危ないね。(③)
If the weak yen continues, Japan’s economy might be in trouble.
投資の話?危なくない?(④)
An investment deal? Doesn’t that sound risky?
古くて危なそうな橋だね。(⑤)
That old bridge looks unsafe.
「危ない」は、大きく分けて次の2つの状況を表します。
・直接的・物理的な危険(①②)
・リスクが高い、または不安定な状況(③④⑤)
まず、「危ない」は目の前に迫った危険、特に交通事故や命に関わる場面など、即座に反応すべき状況で使われます。
[例]
前から車が来てる!!危ない!!
A car is coming this way! Watch out!
火事だ!危ないから、すぐに逃げろ!!
There’s a fire! It’s dangerous—get out of here now!
医者によると、母の命は危ないようです。
According to the doctor, my mother’s life is in danger.
また、直前の危険ではなくても、「このままだと悪い結果になりそうだ」という予測的な意味でも使われます。
[例]
夜道は危ないから、一人で出かけないほうがいいよ。
It’s dangerous to walk alone at night, so you shouldn’t go out by yourself.
⇒ 結果的に危険なことが起こる可能性を表しています。
次に、「危ない」は信頼性が低かったり、不安定でリスクの高い状況にも使われます。
[例]
このままだと会社の経営が危ないかもしれない。
If things stay like this, the company might be in trouble.
⇒ 倒産などの将来の不安を表しています。
あの人はよく嘘をつくし、危ない人だよ。
That person lies a lot—he’s not someone you can trust.
⇒ 信頼できない人という意味です。
彼は酔っぱらっていて足元が危ないです。
He’s drunk, and his footing is unsteady.
⇒ 歩き方が不安定な様子を表しています。
危うい (JLPT N2)
[意味]
① 物事の成否や存在が不安定で、うまくいくかどうか分からない状態
② 命や組織の存続などが最悪の事態を迎えるおそれがあること
③ 「ぎりぎり〜だ」という意味で、寸前のところで回避・成立する状態
[例]
計画が実現できるか危ういです。(①)
It’s uncertain whether the plan can be carried out.
医師によると、父の命が危ういそうです。(②)
According to the doctor, my father’s life is in a critical condition.
危うく電車に乗り遅れるところだったよ。(③)
I almost missed the train.
「危うい」は、「危ない」と比べてより抽象的・内面的な不安定さを表す言葉です。物事の成否や存続、生死に関わる不確かさや、ギリギリで回避できた状況などに使われます。
・成否・存続の不安定さを表す場合
[例]
Aチームが勝つと思っていたけど、危うくなってきたね。
I thought Team A was going to win, but now it’s looking uncertain.
⇒ Aチームが負ける可能性が出てきたという成否が不確かな状況です。
多額の借金で会社の経営が危ういようです。
Due to a large amount of debt, the company’s future seems uncertain.
⇒ 借金によって会社の存続が不安定になっています。
・「ぎりぎり〜だ」を表す場合
[例]
危うく遅刻するところだったよ。
I almost arrived late.
⇒ あと少し遅れていたら遅刻していた=ぎりぎり間に合ったということです。
急ブレーキをかけなかったら、危うく事故になるところでした。
If I hadn’t slammed on the brakes, I would have almost gotten into an accident.
⇒ 事故になりそうだったが、ぎりぎりのところで回避できたという意味です。
比べてみよう
「危ない」と「危うい」はどちらも“危険”を表しますが、使い方には明確な違いがあります。次のような場合、どちらの表現が適切でしょうか?
[例]
① そっちは危ないよ!こっちに来なさい!
② そっちは危ういよ!こっちに来なさい!
この場合、正解は①「危ない」です。
ここでは、目前に迫った物理的な危険や、すぐに悪いことが起こりそうな状況を指しているため、「危ない」が自然です。
では、次の例はどうでしょうか。どちらも文法的には正しいですが、表すニュアンスが異なります。
[例]
① 祖母の命が危ないので、急いで病院へ行きました。
My grandmother’s life was in immediate danger, so I rushed to the hospital.
② 祖母の命が危ういので、急いで病院へ行きました。
My grandmother’s life seemed to be gradually declining, so I rushed to the hospital.
①は「今すぐにでも命の危険がある」ような切迫した状態を表しています。
②は「このままだと命の危機が近づいている」ような、徐々に悪化している状況を表します。
このように、「危ない」は目の前の危険に強く反応するときに使われ、「危うい」は物事の成り行きや状態が不安定で、先行きに不安があるときに使われます。
まとめ
意味 | ニュアンス | よく使う場面 | |
危ない | [直接的・物理的な危険] ① 結果として悪いことが起こりそう ② 今にもダメになりそう [リスクの高い状況] ③ 先行きが不安・見通しが暗い ④ 信頼できない・不明瞭 ⑤ 状況が不安定(身体的・精神的) | 目の前に迫った危険や、信頼性の低さ・将来への不安を表す | ・事故や命に関わる緊急の場面 ・人や物の信頼性に疑問があるとき ・経営や将来の見通しに不安があるとき |
危うい | ① 物事の成否・存続が不安定である ② 死や破綻など最悪の事態に至る恐れがある ③ 「ぎりぎり〜だった」こと | やや抽象的でなことに用い、ある物事の成否や成り立ち・生存や継続が不安定さを表す | ・命・経営・試合などの「続くかどうか」 ・ぎりぎりの結果 |
クイズ
次の文を読んで、( )から文脈に合った表現を選んでください。
問題をクリックすると答えが表示されます。
A. 危ない
この橋は老朽化していて、渡るのはちょっと危ないです。
This bridge is old and worn out, so it feels a bit dangerous to cross.
*老朽化という物理的な危険があるため「危ない」が自然です。
A. 危うい
資金が底をつきそうで、プロジェクトの継続が危うい。
The project’s continuation is in doubt as funds are nearly depleted.
*続けられるかどうか不安定な状態を表すので「危うい」が適切です。
A. 危うく
危うく転びそうになったけど、なんとか踏ん張りました。
I almost fell but managed to keep my balance.
*「ぎりぎり〜だった」という意味で「危うく〜するところだった」が使われます。
A. 危ない
知らない番号からの電話って、なんか危ない気がする。
I get a bad feeling from phone calls from unknown numbers—they seem suspicious.
*信頼できない・怪しいと感じるときには「危ない」を使います。
関連記事
▼メールマガジンに登録▼
日本語学習のヒントを無料で受け取ろう!