ビジネス日本語 – 「いたす」と「させていただく」の違い

目次
1.「いたす」と「させていただく」の違い
2. 「いたす」
3. 「させていただく」
4. 「させていただく」の誤用
5. まとめ
6. クイズ
7. 関連記事
8. コメント
Q: 「いたす」と「させていただく」は使い分けが必要ですか?
A: どちらも相手への敬意や丁寧さを示す表現ですが、状況や場面に応じて正しく使い分けることが大切です。
いたす
「いたす」は「する」の謙譲語(Ⅰ)です。
謙譲語とは、「自分の行いをへりくだって表現することで、相手への敬意を示す」敬語の一種です。
「いたす」は、簡単に言うと「自分の意思や判断に基づいて行う行動」を、へりくだって表現する言い方です。話し手自身の主体的な行動を丁寧に伝えるときに使います。
[例]
明日、こちらからお電話いたします。
I will call you tomorrow.
それは私が確認いたしますので、ご安心ください。
I will check it myself, so please don’t worry.
社長、その片づけは私がいたします。そのままにしておいてください。
President, I will take care of the cleaning. Please leave it as it is.
A「部長、私がコピーいたします。」
B「え、本当に!助かるよ。」
A: Manager, I will make the copies.
B: Oh, really? That helps a lot!
A「だれかこの資料の作成をしてくれないかな。」
B「私がいたします。」
A: Can someone make this document?
B: I’ll do it.
させていただく
「させていただく」は「する」の謙譲語(Ⅱ)にあたります。
文法的には、「使役形(〜させる)」のて形+いただくで構成されます。
「させていただく」は、「相手からの許可」または「相手の配慮・恩恵があること」を前提として、自分がその行動を行うことをへりくだって表現する言い方です。
つまり、「自分が行動をすることを、相手に認めてもらった/許してもらった」というニュアンスが含まれます。
[例]
A「大変恐れ入りますが、改めてご連絡させていただいてもよろしいでしょうか。」
B「わかりました。」
A: Excuse me, but may I contact you again later?
B: That’s fine.
明日の10時までに資料を提出させていただきます。
I will submit the documents by 10 a.m. tomorrow.
A「この件について、少し確認させていただいてもよろしいでしょうか」
B「大丈夫ですよ。」
A: May I check this matter with you for a moment?
B: Sure, no problem.
⇒ 相手に許可が必要な行動です。
(先生に教室の使用の許可をもらって)
先生に教室を使わせていただきました。
I was allowed to use the classroom by the teacher.
「させていただく」の誤用
近年では、日本人であっても敬語を正しく使うことが難しいと感じる人が多く、特に「謙譲語+させていただく」といった表現の誤用が目立っています。
「させていただく」はすでに謙譲語にあたるため、そこにさらに別の謙譲語を重ねると、過剰な敬語表現(いわゆる二重敬語)になり、不自然または誤用とされることがあります。
[誤用例と正しい使い方]
• 拝見する(=見るの謙譲語)
✕ いただいた資料、確かに拝見させていただきました。
〇 いただいた資料、確かに拝見しました。
I have checked the document you sent me.
• 伺う(=行く・訪ねるの謙譲語)
✕ それでは、明日そちらへ伺わせていただきます。
〇 それでは、明日そちらへ伺います。
Then, I will visit you tomorrow.
こうした二重敬語は、敬意を強調しすぎることで、かえって不自然な印象を与えてしまうことがあります。特にビジネスの場面では、「丁寧すぎてかえって失礼」と受け取られる場合もあるため、正しい用法を身につけることが大切です。
まとめ
- 「いたす」は、自らの意思や判断に基づいて行う行動を、へりくだって表す表現。
- 「させていただく」は、相手の許可や配慮・恩恵を前提として、自分が行動することを丁寧に述べる表現。
- 「謙譲語+させていただく」は、敬語を重ねすぎた過剰表現にあたり、一般に二重敬語として誤用とされる。
クイズ
次の文を読んで、( )から文脈に合った表現を選んでください。
問題をクリックすると答えが表示されます。
A. いたします
先輩「あ、明日の歓迎会の店の予約しないと!」
後輩「私がいたします。」
Senior: “Oh, I need to book a place for tomorrow’s welcome party!”
Junior: “I’ll make the reservation.”
*自分の意思で行動する場面なので、「いたします」が正解です。
A. 休ませていただき
部下「昨日は無理を言って、休ませていただきすみませんでした。」
上司「大丈夫ですよ。」
Subordinate: “I’m sorry for taking the day off yesterday without much notice.”
Boss: “It’s okay.”
*上司の許可を得て休んだという背景があるため、「休ませていただき」が正解です。
A. いたします
コピーはわたしがいたしますので、置いておいてください。
I’ll make the copies, so please just leave them here.
*自分の判断で行動する内容なので、「いたす」が正解です。
A. いただきます
こちらのお菓子をいただきます。
I will have this snack.
*「いただく」は「食べる」の謙譲語で、謙譲語と謙譲語を重ねては使えません。「いただく」が正解です。
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