ビジネス日本語 – 「思われる」と「考えられる」の違い

目次
1. 「思われる」と「考えられる」の違い
2. 「〜られる」ってどんな形?
3. 思われる
4. 考えられる
5. 比べてみよう
6. まとめ
7. クイズ
8. 関連記事
9. コメント
Q: ビジネスメールで「思われる」と「考えられる」をよく見ます。使い分ける必要はありますか?
A: どちらも「何かを推測して出した結果や結論」を表す表現ですが、何を根拠にしているかによって使い分ける必要があります。
「〜られる」ってどんな形?
「思われる」「考えられる」のような「〜られる」は、日本語の文法で複数の意味を持つ形ですが、この場合は「自発」の意味で使われています。
◾ 「自発」とは?
「自発」は、「自分でそうしようとしたわけではないけれど、自然とそうなる・そう感じる」といった意味を表します。
[例]
昔のことが思い出されます。
I remember things from the past.
⇒ 自然に思い出がよみがえるということです。
彼の努力が思い浮かべられますね。
His efforts come to mind, don’t they?
⇒ 自然と彼の努力が頭に浮かぶということです。
◾ 「思われる」「考えられる」は、なぜ自発?
思われる:自然とそう思ってしまう・一般的にそう感じられる
考えられる:データや状況から、自然にそういう考えに至る
つまり、自分の意志で「思う」「考える」と言っているのではなく、
「自然にそう感じられる」「そうとらえられる」と少し距離を取った表現になります。
◾ 自発表現の特徴
自発表現は控えめで客観的な印象を与え、断定を避けつつ、説得力や丁寧さを保つために使われます。そのため、論文・報道・ビジネス文書などで多用されています。
[例]
この方法が効果的だと考えられています。
This method is considered effective.
⇒ あくまで自然な見方や広く共有された考えとして述べています。
このように、「思われる」「考えられる」の「〜られる」は、自発の用法として使われており、
受け身ではなく、「自然とそうなる」「そう感じられる」という表現スタイルを作っています。
思われる
「思われる」には、主に次の2つの使い方があります。
① 話し手や一般の人の印象・見解に基づくもの
② 何かを見たり聞いたりして、自然に思いついたこと
[例]
この映画は子どもにも人気があるように思われる。(①)
This movie seems to be popular among children.
彼はあまり話さないが、まじめな人だと思われる。(②)
He doesn’t talk much, but he seems to be a serious person.
最近の若者は安定よりもやりがいを重視しているように思われる。(①+②)
Young people these days seem to value fulfillment more than stability.
このように「思われる」は主観的な感じ方を含むため、日常的な話題や個人的な考えを述べるときによく使われます。
考えられる
「考えられる」は、理論・データ・事実に基づいて、冷静に考えた結論を述べるときに使います。
そのため、論文・レポート・ニュース・ビジネス文書などのフォーマルな場面でよく使われます。
[例]
専門家によると、カロリーが高いものばかり食べると病気になりやすいと考えられている。
According to experts, eating only high-calorie foods is thought to increase the risk of illness.
データによると、結婚する人は年々減っていると考えられる。
According to the data, the number of people getting married is believed to be decreasing year by year.
比べてみよう
「思われる」と「考えられる」は、どちらも“推測”を表しますが、主観的か客観的かが使い分けのポイントです。次のような文を比べてみましょう。
[例①]
彼はまだ新人だが、いい社員になると思われる。
彼はまだ新人だが、いい社員になると考えられる。
正解は「思われる」です。
話し手の印象や周囲の雰囲気に基づいた主観的な予測です。
一方「考えられる」は、実績やデータなどに基づく分析的な判断に適しています。
[例②]
今回の地震では、大きな被害が出たと思われる。
今回の地震では、大きな被害が出たと考えられる。
この場合はどちらも使えますが、ニュアンスが異なります。
「思われる」は、現地の様子や報道などを見た印象。
「考えられる」は、被害の規模や地震の強さなど根拠に基づいた推測です。報道や分析文では「考えられる」がよく使われます。
このように、話し手の立場・目的・文体によって使い分けることが大切です。
文章を自然に、説得力あるものにするためにも、状況に合った表現を選びましょう。
まとめ
使い方 | 特徴 | |
思われる | ① 話し手や一般の人の印象・見解に基づくもの ② 何かを見たり聞いたりして、自然に思いついたこと | 主観的・感覚的 印象や感情にもとづく |
考えられる | 理論・データ・事実に基づいて、冷静に考えた結論を述べる | 論理的・分析的 時間をかけて整理する思考 |
クイズ
次の文を読んで、( )から文脈に合った表現を選んでください。
問題をクリックすると答えが表示されます。
A. 思われる
最近は子どもの読書時間が減っているように思われる。
Recently, it seems that children’s reading time has been decreasing.
*具体的なデータではなく、社会の雰囲気や報道から受ける主観的な印象にもとづいているため、「思われる」が自然です。
A. 考えられている
このウイルスは空気中でも感染する可能性があると考えられている。
It is believed that this virus can also be transmitted through the air.
*専門家の分析や研究結果など、客観的な根拠にもとづいているため、「考えられている」が適切です。
A. 思われる
おそらくこの家には誰も住んでいないと思われる。
It seems that no one lives in this house anymore.
*「おそらく」などの主観的な判断が含まれており、話し手の印象を述べる表現として「思われる」が自然です。
A. 考えられる
このデータから、人は40万年以上前に現れたと考えられる。
Based on this data, it is thought that humans appeared over 400,000 years ago.
*「データから」という明確な根拠にもとづいた推測なので、論理的で客観的な「考えられる」がふさわしい表現です。
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