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「外国人」という一括りへの違和感


目次もくじ

1. 永住権と日本語能力の議論から考える、日本の「これから」
2. なぜ今、永住権に「日本語」が問われるのか?

3. 「外国人」という言葉に隠れる、多様な人々
4. 海外ではどうなっている? ― 世界の「永住」と言語
5. 日本語力は「排除の道具」ではなく「参加の架け橋」に
6. 私たちが築くべき「共に生きる社会」とは
7. 関連かんれん記事

永住権と日本語能力の議論から考える、
日本の「これから」

こんにちは。Enuncia代表のハミルトン葉奈です。

最近、政府の有識者会議で、永住権の取得要件に「一定の日本語能力」を加える方向性が示されたというニュースが、注目を集めています。

関連して海外メディアでも、永住権の新条件として、日本語能力や日本社会への理解を求めることが議論されているという記事が出ています。

▶︎ Japan Today
Japan eyes adding Japanese proficiency to permanent residency requirements

この動きは、単に制度が一つ変わるという話に留まらず、日本が「社会の一員」をどう定義し、これから誰と、どのように未来を築いていくのかという、国の根幹に関わる問いだと感じています。

この記事では、この「永住権と日本語能力」をめぐる議論をきっかけに、私自身が長年抱いてきた「外国人」という言葉への違和感、そして、日本が真の共生社会へと向かうために何が必要なのかを、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

なぜ今、永住権に「日本語」が問われるのか?

今回の議論の背景を理解するためには、まず日本社会の現状を数字で把握する必要があります。
出入国在留管理庁の最新の統計によれば、日本に在留する外国人の数は約396万人にのぼり、過去最高を更新し続けています。
そして、その中で最も多い在留資格が「永住者」で、約93万人。 これは在留外国人全体の約23.6%を占める数字です。

もはや永住者は「一部の例外」ではなく、日本社会を構成する主要な一員と言えます。彼らは就労に制限がなく、在留期間の定めもありません。 しかしその一方で、一部の永住者による税金や社会保険料の未納、あるいは地域社会との間に生まれる文化的な摩擦や、日本語能力の不足が原因で生じるトラブルが問題視されているのも事実です。

政府は、こうした状況を踏まえ、永住者が「単に長く日本に住んでいる」だけでなく、「地域社会の一員として共生」していくことを促す目的で、日本語能力を要件に追加する検討を始めました。 これは、永住を「日本社会で自立して生活を続けるための資格」と位置づけ直す動きとも言えるでしょう。

この議論は、もう一つの大きな流れと合わせて考える必要があります。それは、人手不足が深刻な分野で外国人材を受け入れる「特定技能」制度の拡大です。 こちらは5年間で約34.5万人という目標に向けて受け入れが進んでおり、今後も対象業種の拡大が見込まれています。

つまり日本は今、「定住」を前提とする永住者と、「一時的な労働力」として期待される特定技能従事者という、性質の異なる二つの大きな外国人グループを同時に受け入れているのです。

この状況が、「誰を、どのように受け入れるのか」という問いを、より複雑で、より重要なものにしています。

「外国人」という言葉に隠れる、多様な人々

こうした一連のニュースに触れるたび、私は個人的な、しかし強い違和感を覚えます。

私の父は、日本で永住権を持っています。日本で40年近く暮らし、働き、税金を納めてきました。
人生の半分以上を過ごしたこの国に、彼の生活の基盤も、大切な人間関係も、すべてあります。

一方で、日本の社会保障制度を悪用しようとしたり、地域のルールを守らなかったりする外国人がいる、という指摘も、残念ながら事実なのだと思います。

だからこそ、ひとまとめに「外国人」という言葉で語られることに、私は反発したくなるのです。

日本社会に深く根を張り、ルールを守り、懸命に貢献してきた父のような人と、制度の隙を突くような行動を取る少数の人を、同じ「外国人」という主語で論じることは、本質を見誤らせます。「外国人が増えているから問題だ」「外国人は支援が必要だ/制限すべきだ」といった主語の大きい議論は、あまりに乱暴です。

この問題の根底には、長年、日本の移民政策を研究してきた専門家たちが指摘するように、日本が「労働力不足を補うために実質的な移民受け入れ国となっているにもかかわらず、正面からその事実を認めてこなかった二面性」があるのかもしれません。
「移民政策ではない」という建前を維持してきたことで、誰を社会の一員として受け入れ、そのために社会としてどんな責任を負うのか、という最も重要な議論が深まらないまま、今日に至っているのではないでしょうか。

海外ではどうなっている? ― 世界の「永住」と言語

ここで、少し視野を広げて、海外の事例を見てみましょう。永住権の取得に際して、言語能力や社会への理解を求めるのは、決して珍しいことではありません。

例えば、移民大国であるカナダやオーストラリアでは、ポイント制の永住権申請システムの中で、語学力(英語またはフランス語)が非常に重要な要素とされています。ドイツやフランスでも、永住許可を得るためには一定レベルの言語能力証明が求められ、それに加えて、その国の法制度や歴史、価値観を学ぶ「社会統合コース」の受講が義務付けられていることが一般的です。

これらの国々に共通しているのは、言語能力を単なる「ふるい落としの試験」としてではなく、新しい社会への「参加を促すためのツール」と捉えている点です。言語教育と社会統合プログラムをセットで提供することで、新しく来た人々が社会の一員として円滑に生活をスタートできるよう、国が積極的に支援しているのです。

こうした海外の事例と比較すると、日本の現在の議論は、やや「日本語能力試験のレベルをどうするか」といった技術的な側面に偏りがちに見えるかもしれません。大切なのは、試験のハードルを設けること以上に、その先にある「共に生きる社会」をどうデザインしていくか、という視点ではないでしょうか。

日本語力は「排除の道具」ではなく「参加の架け橋」に

私は決して、永住権に日本語能力を求めるという議論自体に、一概に反対するわけではありません。日本で生活する以上、最低限のルールや価値観を知り、日本語が分からないことで本人が不利益を被らないようにすることは、本人のためでもあり、社会全体のためでもあるからです。

ただし、それはあくまで「排除のための条件」ではなく、「社会に参加するための条件」でなければなりません。

そして、特定技能制度で受け入れ人数を大幅に増やすのであれば、日本語教育や生活支援の体制を抜本的に拡充することが絶対に不可欠です。人数だけを増やし、現場での教育やサポートが追いつかなければ、それは新たな社会の分断や混乱を生むだけです。多文化共生の現場に詳しい教育関係者などが「定住外国人の子どもたちの教育機会の不十分さは、日本社会側の責任だ」と指摘するように、これは受け入れ側である私たち自身の課題でもあります。

私たちが築くべき「共に生きる社会」とは

制度の厳格化か、受け入れ拡大か。
私たちは、この単純な二項対立から抜け出す必要があります。

本当に問われるべきは、「誰を、どのように受け入れるのか」という社会全体のデザインです。
そして、「どこまでを個人の努力に任せ、どこからを社会全体の責任として支えるのか」という線引きを、もっと丁寧に、真剣に議論することではないでしょうか。

日本語教育も、ビザ制度も、本来は「線を引くため」の道具ではありません。多様な背景を持つ人々が、この社会に参加し、私たちと共に暮らしていくための仕組みであるはずです。

その大前提を忘れずに、これからの政策や制度の動きを、私たち一人ひとりが当事者として見つめていく。
その先にこそ、真に豊かで、持続可能な共生社会の姿が見えてくるのだと、私は思います。

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