JLPT N1・N2文法「〜以上」と「〜手前」の違い

目次
1. 「〜以上」と「〜手前」の違い
2. A以上B
3. A手前B
4. 以上 VS 手前
5. まとめ
6. クイズ
7. 関連記事
8. コメント
Q: 「〜以上」と「〜手前」の意味に違いはありますか?
A:「〜以上」と「〜手前」は置き換えが可能な場合もありますが、話し手の気持ちは大きく異なります。それぞれ見てみましょう。
A以上B (JLPT N2)
[意味]
Aなのだから当然Bだ
[ルール]
[V] 動詞普通形+以上
[Na] な形容詞+である+以上
[N] 名詞+である+以上
[例]
[V] 参加すると言った以上、ちゃんと行くべきでしょう。
Since you’ve said you’d participate, you should definitely go.
[Na] 有名である以上、何を言われても仕方ないのかもしれません。
Being famous, you might have to accept whatever is said about you.
[N] 学生である以上、学校のルールは守りなさい。
As a student, you should follow the school rules.
A手前B (JLPT N1)
[意味]
Aしてしまったので、Bするしかない
Aという状況なので、Bするしかない
[ルール]
[V] 動詞辞書形・た形+手前
[N] 名詞の+手前 *この場合は人を表すことばが使われる
[例]
[V] 参加すると言った手前、もう断ることはできません。
Having said I would participate, I cannot back out now.
[V] 後輩に見られている手前、失敗はしたくないです。
Since my juniors are watching, I don’t want to fail.
[N] 子供の手前、泣くわけにはいきません。
In front of my child, I cannot cry.
以上 VS 手前
次の場合、どちらも使うことができますが話し手の気持ちは大きく異なります。
[例]
参加すると言った以上、断ることはできません。
参加すると言った手前、断ることはできません。
Having said I would participate, I cannot back out now.
「以上」は話し手の判断・決意を表します。
つまり話し手は「参加すると言ったのだから断るつもりはない」という意思表示になります。
一方で、「手前」は「自分の立場や状況を守りたい」という気持ちが働いています。
話し手は「もしそれができなければ恥ずかしい・自分の立場が悪くなるかもしれない」という非常に保守的な気持ちです。
[以上]
①話し手があることに対して抱く、当然の判断や考え・決意を表します。
[例]
有名である以上、何を言われても仕方ないのかもしれません。(判断)
Being famous, I might have to accept whatever is said about me. (Judgment)
やると言った以上、絶対に最後までやると決めました。(決意)
Having said I would do it, I’ve decided to see it through to the end. (Determination)
②相手への「当然こうするべきだ」というような働きかけをすることもできます。
その場合は文末に勧め・禁止を表す表現が使われます。
[例]
学生である以上、学校のルールは守りなさい。
As a student, you should follow the school rules.
[手前]
話し手の保守的な気持ちを表し、立場を守りたいために「それしか選択肢がない」という意味合いを作ります。
そのため文末には「~なければならない」「~しかない」のように行動に制限がかかる表現がよく使われます。
[例]
もう国には帰らないと言った手前、日本に住むしかありません。
Having said that I won’t return to my country, I have no choice but to live in Japan.
子供を遊園地へ連れて行くと約束した手前、連れて行かなければなりません。
Having promised to take my child to the amusement park, I must take them.
[Nの手前]
人を表す名詞を使う場合は「Nの前なので」という意味になり、Nには話し手よりも下の立場の人が使われます。
この場合は、「Nの前なので~するようにする/できない」という話し手の相手への配慮の気持ちとその判断が表れます。
[例]
子供の手前、夫と喧嘩するのはやめておこう。
For the sake of my child, I should stop fighting with my husband.
妻の手前、かっこ悪いところは見せられない。
In front of my wife, I can’t afford to show any unflattering sides.
まとめ
A以上B
- 話し手のあることへの当然な判断や考え・決意を表す。
- また相手へ当然こうするべきだというような働きかけをする。
A手前B
- 話し手の立場を守りたい保守的な気持ちを表す。
- 「Nの手前」で使う場合には相手への配慮の気持ちとその判断が表れる。
クイズ
次の文を読んで、( )から文脈に合った表現を選んでください。
問題をクリックすると答えが表示されます。
A. 以上
日本で働くと決めた以上、日本のルールにも慣れてくださいね。
Since you’ve decided to work in Japan, please get accustomed to Japan’s rules as well.
*文末が相手へ働きかけている表現なので「以上」が正解です。
A. 手前
娘の手前、親らしいところを見せたいものです。
For the sake of my daughter, I want to show some parental qualities.
*人を表す名詞が使われていることと、その人へ配慮をしているので「手前」が正解です。
A. 手前
社長にやると言った手前、やらなければならないな…。
Having told the president I would do it, I must do it…
*社長との関係性から自分の立場を守りたい気持ちが働いているので「手前」がふさわしいです。
A. 以上
金持ちである以上、しっかり税金を払うべきです。
Being wealthy, one should duly pay their taxes.
*話し手が金持ちに対する当然の考えを言っているので「以上」が正解です。
関連記事
先生から直接学ぶ
グループレッスンで先生から直接学び疑問を解消しましょう!