「うれしみが深い」は正しい?若者言葉から見る形容詞の名詞化

目次
1. 若者言葉から見る形容詞の名詞化
2. 形容詞の名詞化「-み」
3. 形容詞の名詞化「-さ」
4. 「うれしみが深い」?
5. まとめ
6. 関連記事
7. コメント
Q: Xで見た「うれしみが深い」の意味がわかりません。「うれしい → うれしみ」はOKですか?
A: 「うれしみが深い」は数年前から若者を中心に使われ始めたネットスラングですが、正しい日本語表現ではありません。
形容詞を名詞化する場合、「-み」または「-さ」を用います。
ただし「-み」を付けて名詞化できる形容詞は非常に限られており、一般的には「-さ」を使うことが多いです。そのため「うれしい」の名詞形は「うれしさ」となります。とはいえ「うれしさが深い」という表現も不自然で誤りです。
ここでは、形容詞の名詞化の仕組みと「うれしみが深い」が誤用とされる理由をあわせて解説します。

形容詞の名詞化については
こちらの記事でも説明していますので
併せて読んでみましょう。
形容詞の名詞化「-み」
[ルール]
[A] い形容詞い+み
[例]
この部屋には木のあたたかみがあります。
This room has the warmth of wood.
大切な友人を失った悲しみは、時が経っても心に残っています。
The sorrow of losing a dear friend remains in the heart even as time passes.
彼の話には深みがあって、聞いていて考えさせられます。
His story has depth, and listening to it makes you think.
[「-み」が使える言葉の分類]
「-み」で名詞化できる形容詞は非常に限られており、主に次の4種類に分けられます。
・感情を表す形容詞
・感覚を表す形容詞
・味覚を表す形容詞
・属性を表す形容詞
さらに、この中でも実際に「-み」を伴える形容詞は限定されています。
感情・感覚を表す形容詞
〇 悲しい、痛い、楽しい、おもしろい、あたたかい
✕ うれしい、寒い、涼しい
味覚を表す形容詞
〇 うまい、甘い、苦い、辛い
✕ すっぱい
属性を表す形容詞
〇 厚い、深い、赤い、青い など
✕ 長い、広い
「うれしい」は感情を表す言葉ですが、「うれしみ」とは言えません。
「-み」は、具体的で明確な事実よりも、感覚的・抽象的なニュアンスを表す場合に使われやすいという特徴があります。
[例]
夕日の赤みが、山をきれいにそめました。
The redness of the sunset beautifully dyed the mountains.
⇒「赤み」は、はっきりとした赤ではなく「赤がかっている色」や「赤い度合い」を表す抽象的な表現です。
大人になると、苦みのある野菜もおいしく感じます。
As you become an adult, even vegetables with bitterness can taste good.
玉ねぎをよく炒めると、甘みが出ます。
When onions are well sautéed, their sweetness comes out.
このように「-み」は使える場面が限られ、感覚的・比喩的なニュアンスを強調するのに用いられます。
形容詞の名詞化「-さ」
[ルール]
[A] い形容詞い+さ
[Na] な形容詞な+さ
*「いい」は「よい」を使い「よさ」になる。
[例]
勝利したときの嬉しさを今も忘れられません。
I still cannot forget the happiness I felt when we won.
彼の頭の良さには誰にも敵いません。
No one can match his intelligence.
この町の便利さに慣れたら、もう他の町には住めないよ。
Once you get used to the convenience of this town, you can no longer live in another.
「-さ」は い形容詞 だけでなく な形容詞 にも使えるため、表現の範囲が広いのが特徴です。
「-み」と比べると、より 具体的で客観的な事柄 を表すときに用いられる傾向があります。
そのため「-み」で表せる言葉も、多くの場合「-さ」で置き換えられます。
[例]
〇このケーキは甘みがありますね。
This cake has sweetness.
〇このケーキは甘さが強すぎます。
This cake’s sweetness is too strong.
「甘み」と「甘さ」はどちらも可能ですが、
「甘さ」は数値的・比較的に評価できる具体性があり、
「甘み」は感覚的・抽象的なニュアンスを持ちます。
[例]
このかばんの重さは1キロあります。
This bag weighs 1 kilogram.
これだけ広さがあれば十分です。
This much space is enough.
このように「-さ」は 程度・分量・性質 を具体的に示すときに多く使われるため、学習者にとって汎用性の高い名詞化表現です。
「うれしみが深い」?
この表現は正しい日本語ではなく誤用ですが、使われる場面では「とてもうれしく感じる」という意味合いを表しています。
本来「[名詞+]が深い」という表現は、「表面からは見えないほど内面的な厚みがある」 という客観的な比喩として用いられます。
[例]
先生は歴史の知識が深いです。
The teacher has deep knowledge of history.
二人の信頼関係は深いです。
The trust between the two is deep.
一方で、「うれしみが深い」という言い回しは、若者が自分の感情をあえて客観視し、婉曲的に表現しようとしたネットスラングと考えられます。
しかし、正しい日本語として表現するなら 「とてもうれしい」「非常にうれしい」 が適切です。
「うれしみが深い」が誤用とされる理由
「うれしい」の名詞形は正しくは「うれしさ」であり、「うれしみ」とはなりません。
また、「名詞+が深い」という表現は、知識や関係性などを評価する際に使われる客観的・比喩的な言い回しであり、主観的な感情に用いるのは不自然です。
さらに、「うれしい」という語自体が個人的な感情を直接表す性質を持つため、「うれしみが深い」という組み合わせは日本語として適切ではないのです。
このように、「うれしみが深い」は独特の響きから広まったネットスラングではありますが、標準的な日本語としては誤用である点に注意が必要です。
まとめ
形容詞の名詞化には「-み」と「-さ」の2種類がある
- 「-み」は一部のい形容詞にのみ使え、使える語はごく限られる。抽象的・感覚的な表現に多い。
- 「-さ」はほとんどのい形容詞・な形容詞に使え、具体的な事柄を表すときによく用いられる。
「うれしみが深い」は誤用である
- 本来「うれしい」の名詞形は「うれしさ」であり、「うれしみ」とはならない。
- 「[名詞+]が深い」は知識や関係性などを表す客観的な比喩表現であり、主観的な感情には適さない。
- 「うれしい」は個人的な感情を直接表す言葉であるため、正しい言い換えは「とてもうれしい」「非常にうれしい」となる。
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