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「苦手」を続けるの、やめませんか


目次

1. 「苦手」を続けるの、やめませんか
2. アイルランドに行ったら、数学の天才になった

3. 「苦手」は、その人の本質とは限らない
4. 苦手なことを、無理してやらなくていい
5. 得意なことに寄せたほうが、結果的にうまくいく
6. 「苦手」を手放すと、自分の強みが見えてくる
7. 個人で働くなら、その自由を使っていい
8. 関連記事

「苦手」を続けるの、やめませんか

こんにちは。株式会社Enunciaのハミルトン葉奈です。

突然ですが、私は子どもの頃、数学が壊滅的に苦手でした。

小学校のころから、教科の中で数学だけが飛び抜けてできなかった。
高校受験のときには、数学だけ塾に通わせてもらいました。
そこで基礎から叩き直してもらい、テストの点もかなり上がって、少しだけ苦手意識が薄れたこともあります。

それでも、高校1年生のとき、数Bのテストで8点を取ったことがあります。100点満点で、8点です。
こんなにわからないものに時間を使うのは無駄だと思い、捨てていたとはいえ、本当にひどいものです。

もう、本当に数学はだめなんだ。
私は数学が苦手な人間なんだ。

当時は、それを疑うことすらなく、完全にそう信じていました。

アイルランドに行ったら、数学の天才になった

ところが、高校2年生のときにアイルランドへ渡り、最初の数学の授業を受けたとき、私は目を疑いました。

日本でやっていた数学と、求められているものがかなり違ったのです。

単元そのものは同じでも、問題の難易度や、重視される力が違う。
日本の数学のように、複雑な計算を正確に速くこなすことが強く求められるというより、基本的な考え方を理解しているかどうかが重視されているように感じました。

しかも、アイルランドでは授業でも試験でも高性能の計算機を使ってよかったんです。
三角関数もルートも、複雑な計算は機械に任せていい。
「ミスが出やすいところは道具を使えばいい」という発想が、当たり前のようにありました。

私が日本で苦手だったのは、もしかすると数学そのものというより、日本の数学のやり方だったのかもしれません。

おかげで留学中、数学はずっとA+。
「できる」とわかってやるから、問題を解くのも楽しくなって、いつの間にか数学の授業が大好きになっていました。
大学受験でも、数学はむしろ武器になりました。

先生にも褒められる。
クラスメートにも「日本から数学の天才が来た」と言われる。

「え、こんなんで評価してもらえるの? 最高!!」

そんな驚きと嬉しさが入り混じった感覚を、今でもよく覚えています。
数学が大の苦手だったはずの私が、環境が変わっただけで、「数学がめちゃくちゃ得意な人」になったのです。

「苦手」は、その人の本質とは限らない

この経験から、私が思うようになったことがあります。

「苦手」というのは、その人の本質ではないかもしれない、ということです。

日本の数学のやり方が、たまたま私に合わなかっただけかもしれない。
数学そのものが苦手だったわけではなく、教え方、求められレベル、評価のされ方が合っていなかっただけかもしれない。

比較する集団が変わっただけで、評価はまるで逆転しました。
つまり「苦手」という判断は、ある特定の環境、方法、文脈の中で成立している、相対的なものにすぎないのです。

これは、日本語教育にもそのまま当てはまると思っています。

「この生徒は漢字が苦手」と思っていても、教え方が合っていないだけかもしれない。
あるいは、教師自身が「私はこれが苦手」と思っていることも、能力の問題ではなく、やり方や前提の問題かもしれない。

ただ、今日の本題はもう少し実践的な話です。

苦手なことを、無理してやらなくていい

日本語教師として個人で活動することの、いちばん大きなメリットは何だと思いますか。

私は、「嫌なことを避けられること」だと思っています。

会社員であれば、苦手な業務も、気が合わない相手も、向いていない役割も、ある程度は引き受けなければなりません。組織に属している以上、全部を自分で選ぶことは難しい。

でも、個人事業主は違います。
苦手なことを断る自由がある。

私は、生徒も選びます。
ルールや時間を守らない生徒は、容赦なくクビにします。
それは、私がそういう人に自分の時間とエネルギーを使いたくないからです。
私には断る権利がある。その自由を使わない理由はありません。

得意なことに寄せたほうが、結果的にうまくいく

先日、お話ししていたある先生が、「上級の文法解説が苦手だけど、できるようにならなきゃと思っていて……」とおっしゃいました。
そのとき私は、「いやいや、苦手なことを、わざわざ無理してやらなくていいですよ」と答えました。

文法解説が苦手なら、別に無理してやらなくていいのです。

会話中心のレッスンが得意なら、そちらに特化すればいい。
子どもへの指導が向いていないと感じるなら、大人だけを対象にすればいい。
ビジネス日本語より日常会話のほうが楽しいなら、そちらを伸ばせばいい。

苦手なことを無理して続けるより、得意なことと好きなことを磨いたほうがいい。
そのほうが、結果として生徒にとっても良いレッスンになります。

なぜなら、苦手意識を持ちながら教えている授業と、自分が得意で楽しんでいる授業では、伝わるものが根本的に違うからです。

教師自身が不安を抱えながら進める授業と、手応えを持って進める授業。
どちらが生徒にとって心地よく、学びやすいかは、言うまでもありません。

「苦手」を手放すと、自分の強みが見えてくる

日本で数学の赤点を取り続けていた学生時代、私はおそらく、正しい方向に努力できていなかったのだと思います。
苦手なものを、苦手なまま、苦手な気持ちを抱えながら、同じやり方で続けていた。

でもアイルランドでは、環境が変わったことで、自然と自分の意識も変わりました。
「自分はできない側の人間だ」と思い込んでいたものが、やり方や評価のされ方が変わるだけで、得意なものに変わることもある。私はそれを身をもって知りました。

ただ、その一方で、すべての苦手を無理に克服しなければいけないとも思いません。
苦手なことに執着し続けるより、自分の強みがどこにあるかを正直に見つめて、そこに集中したほうがいいこともあります。

「苦手なことをやるな」というのは、逃げろという意味ではありません。
苦手だと思っていることが、本当に乗り越えるべきものなのか、それともただ自分に合っていないだけなのか、一度立ち止まって考えてみてほしい、ということです。

あるいは、「苦手だ」と思い込んでいるその感覚自体が、本当に絶対的なものなのか、一度疑ってみてもいいのかもしれません。

個人で働くなら、その自由を使っていい

苦手なことを無理して続けるために使っているエネルギーを、得意なことを伸ばすために使ったほうがいい。
そのほうが、あなた自身も、あなたの生徒も、ずっと豊かになれると思います。

個人事業主として活動するということは、その選択ができるということです。
全部できる先生になろうとしなくていい。
苦手を克服し続けることだけが成長ではありません。

何をやらないかを決めること。
どこで勝負するかを決めること。
それも立派な戦略です。

苦手な文法解説、やめていいのです。
その代わり、自分が本当に力を発揮できる場所で、ちゃんと勝てばいいのだと思います。

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