JLPT N4文法 – 受身形・使役形・使役受身形の使い方完全ガイド②

目次
1. 受身形・使役形・使役受身形の使い分け
2. 使役形の種類
3. ①強制・勧め
4. ②誘発
5. ③許可・恩恵
6. ④責任
7. ⑤放置
8. ⑥他動詞の使役
9. まとめ
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11. コメント
Q: 受身形・使役形・使役受身形がいつまで経ってもよく理解できません。
A: 受身形・使役形・使役受身形は、日本語学習者にとって複雑な文法のひとつです。
ここでは様々な意味をもつ使役形について説明をしていきます。
使役形の種類
まずは、それぞれの使い方の全体像を見ていきましょう。
種類 | 使い方 | 例文 |
① 強制・勧め | 目上の人が目下の人にある行為を強制または勧めるときに使う | 先生は生徒に教室をそうじさせました。(強制) とてもいい本なので、子供にも読ませました。(勧め) |
② 誘発 | あることが原因となって、心理的な変化や感情的な動作を引き起こすことを表す | 友達におもしろい話をして、笑せるのが好きです。 悪いことをして両親を悲しませてしまいました。 |
③ 許可・恩恵 | 人が希望することを第三者が許すときに使う。 または相手に許可をもらったことで、それに対しての恩恵の気持ちを表す | 子供がもう少し遊びたいというので、遊ばせました。(許可) いろいろ勉強させていただき、ありがとうございました。(恩恵) |
④ 責任 | 自分の原因で、それに対して相手が働きかけをすることになり、自分が責任を感じることを表す | わざわざ遠くまで来させてごめんね。 締め切りに間に合わせなくて、部下にも手伝わせてしまいました。 |
⑤ 放置 | あるものを放置して、結果としてある状態になることを表す | 水を凍らせました。 冷蔵庫に何か月も野菜を置いたままにして、腐らせてしまいました。 |
⑥ 他動詞の使役 | ある状態になるとき、その状態を起こす主体に焦点を当てるときに使う。*自動詞を使役の形にして他動詞として使う | この雲は、広い範囲で大雨を降らせる可能性があります。 夢を実現させるためにがんばっています。 |

受身形について詳しく知りたい方は
この記事を読んでください。
①強制・勧め
目上の人が目下に対して、ある行為を強制したり、勧めるときに使います。
強制の場合は、相手が好ましくないと感じていても、無理にさせることを表します。ただし、目下の人から目上の人への行為には使えません。
[例]
子供の部屋が物だらけなので、いらないものを捨てさせました。(強制)
Because my child’s room was full of things, I made them throw away what they didn’t need.
家でゲームばかりしている子供を外に行かせました。(強制)
I made my child, who was always playing games at home, go outside.
先生はいい日本語の本を勧めて、生徒にも買わせました。(勧め)
The teacher recommended a good Japanese book and made the students buy it, too.
このソフトは仕事に便利なので、社員にも使わせています。(勧め)
This software is useful for work, so I make my employees use it, too.
②誘発
感情を伴う動詞と一緒に使い、あることが直接的な原因となって、心理的な変化や感情的な動作を引き起こすことを表します。
[よく使われる動詞]
泣く・驚く・喜ぶ・悲しむ・安心する・怒る など
[例]
サンタは子供にプレゼントをあげて、喜ばせます。
Santa gave presents to the children and made them happy.
後ろから友達に声をかけたら、思った以上に驚かせてしまいました。
I called out to my friend from behind, and ended up surprising them more than I expected.
冗談のつもりで言ったことが、友達を怒らせてしまいました。
What I said as a joke ended up making my friend angry.
③ 許可・恩恵
相手が希望することを、第三者が許すときに使います。また、相手に許可をもらったことで恩恵を感じている気持ちを表すときにも使います。相手の希望をかなえさせてあげるニュアンスや、相手の行為を許可する優しさが込められています。
[よく一緒に使う動詞]
遊ぶ・休む・話す・使う・学ぶ など
[例]
娘の具合が悪そうなので、休ませした。(許可)
My daughter didn’t seem to be feeling well, so I let her rest.
先生にお願いして、部屋を使わせてもらいました。(許可・恩恵)
I asked the teacher and was allowed to use the room.
ためになることを学ばせていただき、ありがとうございました。(恩恵)
Thank you very much for letting me learn so many useful things.
④責任
自分が原因で、相手に何かをさせてしまう状況を表し、責任を感じる気持ちを伝えます。
相手に対して申し訳ないという気持ちを含むため、「させてしまう」の形で使われることが多いです。
[例]
仕事が終わらなくて、鈴木さんにも残業させてしまってごめんね。
I couldn’t finish my work and ended up making Suzuki-san work overtime too. I’m sorry.
財布を忘れて、先輩にお金を払わせてしまいました。
I forgot my wallet and ended up making my senior pay for me.
ずいぶん待たせてしまって、すみません。
I’m sorry for making you wait so long.
⑤放置
「放置して、(ある状態)になる」ことを表します。特に、その状態が望ましくない結果を引き起こす場合、「させてしまう」の形で使われることが多いです。
[よく使われる動詞]
くさる・(カビが)生える・凍る・固まる・死ぬ など
[例]
氷点下の場所に置いて水を凍らせると氷になります。
If you leave water in a freezing place, it will turn into ice.
何か月もパンを置いたままにして、くさらせてしまいました。
I left the bread there for months and ended up letting it rot.
何日も金魚にえさをやるのを忘れて、死なせてしまいました。
I forgot to feed the goldfish for several days and ended up letting it die.
⑥他動詞の使役
日本語では「わたしはドアを開ける」(他動詞)⇔「ドアが開く」(自動詞)のように、ペアになる他動詞と自動詞があります。ただし、「咲く」や「降る」などにはこのようなペアがありません。
しかし、その状態を引き起こす主体に焦点を当てたいとき、自動詞を使役形にして他動詞のように使うことができます。
[他動詞化する主な自動詞]
咲く・降る・輝く・向上する・発展する・進歩する・完成する・実現する など
[例]
きれいな花が咲きました。(自動詞)
A beautiful flower bloomed.
⇒ 基本的に主語は「が」格を使い、目的語を必要としません。
そのつぼみは、きれいな花を咲かせます。
That bud will make a beautiful flower bloom.
⇒ 「きれいな花」を咲かせる主体は「つぼみ」なので、つぼみに焦点を当てます。
この場合、他動詞の基本文型([主語]は[目的語]を+他動詞)と同じ形をとるため、焦点となるものは「は」格で示し、それによって生じる状態は「を」格で表し、使役形を用います。
[例]
この国は発展します。(自動詞)
This country develops.
わたしたちはこの国を発展させます。(他動詞化)
We will develop this country.
このビルは来年完成します。(自動詞)
This building will be completed next year.
わたしたちはこのビルを来年させます。(他動
We will complete this building next year.
まとめ
主
- ① 強制
きょうせい
目上めうえ の人ひと が目下めした の人ひと に対たい して、ある行為こうい を強制きょうせい したり勧すす めるときに使つか う。
強制きょうせい の場合ばあい 、相手あいて が好この ましくないと感かん じていても無理むり にさせることを表あらわ す。 - ② 誘発
ゆうはつ
感情かんじょう を伴ともな う動詞どうし と一緒いっしょ に使つか い、あることが直接ちょくせつ 的てき な原因げんいん となって心理しんり 的てき な変化へんか や感情かんじょう 的てき な動作どうさ を引き起ひ お こすことを表あらわ す。 - ③ 許可
きょか ・恩恵おんけい
相手あいて の希望きぼう を許可きょか するときや、相手あいて に許可きょか をもらったことで恩恵おんけい を感かん じる気持きも ちを表あらわ す。
相手あいて の希望きぼう をかなえさせるニュアンスや、相手あいて の行為こうい を許可きょか する優やさ しさが込こ められる。 - ④ 責任
せきにん
自分じぶん の原因げんいん で、相手あいて に何なん かをさせてしまう状況じょうきょう を表あらわ し、責任せきにん を感かん じる気持きも ちを示しめ す。
申し訳もう わけ ない気持きも ちを含ふく むため、「させてしまう」の形かたち でよく使つか われる。 - ⑤ 放置
ほうち
「放置ほうち して、(ある状態じょうたい )になる」ことを表あらわ す。
結果けっか が望のぞ ましくない場合ばあい 、「させてしまう」の形かたち で使つか われることが多おお い。 - ⑥ 他動
たどう 詞し の使役しえき
ペアになる他動たどう 詞し がない自動じどう 詞し で、その状態じょうたい を引き起ひ お こす主体しゅたい に焦点しょうてん を当あ てたいとき、自動じどう 詞し を使役しえき 形けい にして他動たどう 詞し のように使つか う。
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