JLPT N3表現 – 「とんでもない」の3つの意味と使い方

目次
1. 「とんでもない」はいい意味?悪い意味?
2. 基本の意味と使い方
3. ①予想外・意外性を表す
4. ②悪い意味合いを表す
5. ③否定の意味合い
6. まとめ
7. 関連記事
8. コメント
Q: 「とんでもない」はどういう意味ですか?悪い意味もありますか?
A: この表現は敬語表現として使う一方で、悪い意味を表すときにも使います。
意味は大きく3つに分けられ、意外な出来事に驚くとき、相手を非難するとき、そして丁寧に謙遜するときで、場面によってまったく異なるニュアンスで使われます。
基本の意味と使い方
「とんでもない」は、文脈によって次の3つの意味で使われます。
①思いがけないこと・意外な出来事に対する驚き
②「ひどい」「非常識だ」といった否定的な評価を表す
③「まったくそんなことはない」と相手の言葉を否定・謙遜す
[例]
絶対に負けると思っていたのに、優勝するなんてとんでもない展開だね!(①)
I thought we would definitely lose, but we won the championship—what an unbelievable outcome!
あの会社の対応はとんでもないね。(②)
That company’s response was terrible.
A「日本語が上手ですね!」
B「とんでもないですよ、まだまだです。」(③)
A: Your Japanese is very good!
B: Not at all. I still have a long way to go.
①予想外・意外性を表す
話し手が予想していなかった出来事に対する強い驚きや衝撃を表すときに使います。
肯定的な驚きにも、否定的な驚きにも使えるのが特徴です。
[例]
絶対に負けると思っていたのに、優勝するなんてとんでもない展開ですね!(肯定的)
I thought we would definitely lose, but we won the championship—what an unbelievable outcome!
この発見ですばらしい薬が開発できるかもしれない!とんでもない発見だよ。(肯定的)
This discovery might help create a great new medicine! It’s an incredible finding.
この宝石が偽物だったなんて、とんでもない話です。(否定的)
I can’t believe this jewel was fake—that’s a shocking story.
近所のあの人が犯人だなんて!とんでもないことだね!(否定的)
That person in the neighborhood is the criminal? That’s unbelievable!
②悪い意味合いを表す
「とんでもない」は、非常識・失礼・モラルに反するような行動や状況を強く非難する場面で使われます。「ひどい」「信じられない」といった否定的なニュアンスを含みます。
[例]
客がこんなに怒っているのに、謝らないとはあの会社の対応はとんでもないね。
The customer is so angry, but they didn’t even apologize—that company’s response is terrible.
こんな時間に外でカラオケだなんて、とんでもない人達だ!
Singing karaoke outside at this hour? What unbelievable people!
子どもの前でそんな言葉を使うなんて、とんでもないマナー違反だよ。
Using that kind of language in front of children—that’s very bad manners.
ミスを部下に押しつけるなんて、とんでもない上司だね。
Blaming a mistake on a junior employee? What a terrible boss!
③否定の意味合い
「とんでもない」は、相手の言葉を否定する場面で使われます。
大きく分けて、以下の2つの用法があります。
① 相手の言葉に対する強い否定
事実に反する発言や疑いを強く否定する際に使われます。驚きや怒りのニュアンスを込めて使われることが多いです。
[例]
私がそんなうそを言った?とんでもない!絶対にありえません。
I told such a lie? No way! That’s absolutely impossible.
A「君がこのミスをしたんじゃないの?」
B「とんでもない!私は全く関与していません。」
A: Weren’t you the one who made this mistake?
B: Not at all! I had nothing to do with it.
② 謙遜を込めた丁寧な否定(敬語表現)
相手から褒められたり、感謝・謝罪されたりした際に、謙遜や気遣いの気持ちを伝えるために使います。ビジネスシーンでは「とんでもないことです」「とんでもないことでございます」といったより丁寧な形も用いられます。
■褒められたとき
A「日本人と同じレベルの日本語力ですね!」
B「とんでもないですよ、まだまだです。」
A: Your Japanese is as good as a native speaker’s!
B: Not at all. I still have a long way to go.
■感謝されたとき
A「こんなに早く書類を仕上げてくれて、ありがとう!」
B「とんでもないことでございます。お役に立てて嬉しいです。」
A: Thank you for finishing the documents so quickly!
B: It’s nothing at all. I’m just happy I could be of help.
■謝罪されたとき
A「この度はご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。」
B「とんでもないことです。どうかお気になさらないでください。」
A: I’m truly sorry for the trouble I caused you.
B: Please don’t worry about it. It’s really no problem at all.
まとめ
- 「とんでもない」は、大きく分けて①予想外・意外性、②ひどい・非常識、③否定(強い否定・丁寧な否定〈謙遜〉)の3つの用法がある。
- 「予想外・意外性」は、話し手が予想していなかった出来事に対する強い驚きを表し、肯定的にも否定的にも使える。
- 「ひどい・非常識」は、常識に反したり許されない行為を非難する場合に用いられる。
- 「否定」の用法には、①相手の発言内容を強く否定する場合と、②褒め言葉・感謝・謝罪に対して丁寧に否定する(=謙遜)場合の2種類があり、後者は敬語表現として使われる場面が多い。