JLPT N4語彙 – 時間表現の違い「このとき・そのとき・あのとき」

目次
1. 時間表現の違い「このとき・そのとき・あのとき」
2. 近い時間や特定の場面を指す場合
3. 少し離れた時間を指す
4. 過去の時間を指す
5. 比べてみよう
6. まとめ
7. クイズ
8. 関連記事
9. コメント
Q: 「そのとき」と「あのとき」の違いは何ですか。
「あのとき、ベルが鳴りました」はなぜ間違っているのか教えてください。
A: 時間を指す「このとき・そのとき・あのとき」は、時間的・心理的な距離や文脈によって使い分けられます。
「このとき」:話し手にとって現在の時間、または直前の時間を指す。
「そのとき」:話し手と聞き手の間で共通認識がある過去の時間を指す。
「あのとき」:話し手と聞き手のどちらから見ても遠い過去の時間を指す。
したがって、「あのとき、ベルが鳴りました」という文は、話し手と聞き手の間にその時間の共通認識がない場合、不自然になることがあります。共通認識がある場合は「そのとき」を使うのが適切です。
詳しく見ていきましょう。
近い時間や特定の場面を指す場合
[ポイント]
① 直前の時間を指す:話し手にとって、ある時点から近い時間を表す。
② 話の中の出来事を述べるとき:ある話の流れの中で、出来事が起こった瞬間を指す。
③ 過去の場面を強調するとき:過去の話の中で、特定の時間を際立たせたいときに使う。
[例]
テレビで有名な起業家を見て、このとき私も起業しようと思いました。(①)
When I saw a famous entrepreneur on TV, at that moment, I thought, “I should start my own business too.”
子どもが車にひかれかけました。このとき、男の人が走って助けに行きました。(②)
A child was about to be hit by a car. At that moment, a man ran over and saved them.
「わぁ、お父さんが子どものときの写真? このとき、何歳ぐらい?」(③)
“Wow, is this a picture of you when you were a child, Dad? How old were you at that time?”
③のように、過去の特定の時間を強調したい場合に「このとき」が使われることが多いです。
少し離れた時間を指す
「そのとき」は「このとき」と違い、話し手にとって心理的に「少し遠い時間」を指します。
[ポイント]
① 会話の流れや相手が話題にしている時間を指す
② ある瞬間を指す(出来事が起こったちょうどそのタイミング)
③ 話し手にとって遠すぎず近すぎない時間を指す
[例]
地震が来たそのとき、すぐに机の下に逃げました。(①)
When the earthquake struck, at that moment, I immediately took shelter under the desk.
A「昨日のコンサートは大成功だったよ! たくさん拍手をもらったんだ。」(①)
B「そのときの気持ちは最高だったでしょ?」
A: “Yesterday’s concert was a huge success! I received a lot of applause.”
B: “You must have felt amazing at that moment, right?”
もうこの試合は負けだろうと思いました。そのとき、選手が見事なゴールを決めました。(②)
I thought this match was already lost. At that moment, a player scored a spectacular goal.
駅に着いたそのとき、ちょうど電車が出発してしまいました。(③)
Just as I arrived at the station, at that moment, the train departed.
「そのとき」は、話の流れの中で、少し前や少し遠い時間を指すときに使われます。
過去の時間を指す
「あのとき」は、「このとき」「そのとき」と異なり、話し手にとって時間的・心理的に遠い過去を指します。
[ポイント]
① 話し手にとって時間的・心理的に遠い過去を指す
② 話し手・聞き手にとって共通認識のある過去の時間を表す
[例]
(子どもの頃の話をしながら)
あのときは、まだ山や川など自然がたくさんあったよ。(①)
Back then, there were still plenty of mountains, rivers, and nature.
(過去の出来事について話しながら)(②)
A「ねえ、あのときのこと覚えてる?」
B「あのとき?」
A「みんなで海に花火を見に行ったこと!」
B「あのときね! あのときは楽しかったね!」
A: “Hey, do you remember that time?”
B: “That time?”
A: “When we all went to the beach to watch the fireworks!”
B: “Oh, that time! That time was so much fun!”
「あのとき」は、遠い過去の出来事を振り返るときや、話し手・聞き手が共通で覚えている過去の出来事を指すときに使われます。
比べてみよう
では、「そのとき、ベルが鳴った」と「あのとき、ベルが鳴った」はどちらがふさわしいでしょうか?
実は、話し手の心情や文脈によって、どちらも使うことができます。
[例①]
教室へ入ろうとしました。そのとき、ベルが鳴りました。
I was about to enter the classroom. At that moment, the bell rang.
⇒ この場合、「教室に入る」という直前の出来事を指しているので、「そのとき」が適切です。
[例②]
警察:「事故があった時間は何時ぐらいか覚えていませんか?」
女性:「はっきり覚えていませんが…あ、確か、あのとき学校のベルが鳴りました。」
Police: “Do you remember about what time the accident happened?”
Woman: “I don’t remember exactly… Oh, I think back then, the school bell rang.”
⇒ この場合、女性ははっきりと覚えていない過去の記憶を回想しているため、心情的にも時間的にも距離がある「あのとき」を使うほうが自然になります。
まとめ
[このとき]
- ① 話し手にとって、ある時点から近い時間(直前)を指す。
- ② 話の流れの中で進行中の出来事を表すときに使う。
- ③ 過去の話の中で、ある場面を強調したいときに使う。
[そのとき]
- ① 会話の流れで出てきた時間や、相手が話題にしている時間を指す。
- ② ある瞬間の時間を指す。
- ③ 話し手にとって、遠すぎず近すぎない時間を表す。
[あのとき]
- ① 話し手にとって、時間的・心理的に遠い時間を指す。
- ② 話し手・聞き手にとって共通認識のある過去の時間を指す。
クイズ
次の文を読んで、( )から文脈に合った表現を選んでください。
問題をクリックすると答えが表示されます。
A. あのとき
遠い昔の話なので、あのときのことは忘れてしまいました。
Since it was a story from a long time ago, I have forgotten that time.
*話し手にとって遠い過去の話をしているので「あのとき」が正解です。
A. そのとき
ジョン「25歳のとき、カナダを旅行したんだ」
ゆみ「へえ、そのときどの町に行ったの?」
John: “When I was 25, I traveled to Canada.”
Yumi: “Oh, at that time, which city did you visit?”
*相手が話題にしていることの時間を指しているので「そのとき」が正解です。
A. そのとき
彼がプロポーズしてくれて、そのときすぐに返事をしました。
He proposed to me, and at that moment, I gave him my answer immediately.
*ある瞬間の出来事を指すため、「そのとき」が適切です。
A. あのとき
マリア「3年前のみちこちゃんの結婚式、覚えてる?」
かな「もちろん。あのときみんなでみちこちゃんのためにビデオを作ったよね」
Maria: “Do you remember Michiko’s wedding three years ago?”
Kana: “Of course! Back then, we all made a video for her, right?”
*二人が共通認識している過去の時間なので「あのとき」がふさわしいです。
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