ビジネス日本語 – 失礼にならない「できる・できない」の伝え方

目次
1. 失礼にならない「できる・できない」の伝え方
2. 「できる・できない」を直接使わない理由
3. 自分のことについて述べる場合
4. 上司に確認する場合
5. まとめ
6. 関連記事
7. コメント
Q: ビジネスシーンで「できない」と伝える際に、失礼にならない言い方はありますか?
A: 「できる・できない」は能力や可能性を表します。ビジネスの場面では直接的な言い方を避けつつも具体的かつ謙虚に述べることが大切です。この記事で詳しく見ていきましょう。
「できる・できない」を直接使わない理由
「できる・できない」は、能力や可能性を表す表現ですが、そのまま使うと直接的すぎる印象を与えることがあります。
特に目上の人やビジネスシーンでは、「できない」と伝えることが相手に否定的な印象を与えたり、非協力的に聞こえたりする可能性があります。そのため、より丁寧な言い回しが求められます。
また、「できません」と単純に伝えると、冷たい印象を与えたり、責任を回避しているように受け取られることがあります。そのため、クッション言葉や柔らかい表現を使い、相手に配慮した伝え方をすることが重要です。
適切な敬語表現を用いることで、円滑なコミュニケーションができるだけでなく、相手に対する敬意やプロフェッショナルな態度を示すことができます。
自分のことについて述べる場合
能力や実行の可能性について自分のことを述べる場合、「できる」を使っても問題ありません。ただし、場面や状況に応じて適切な言い方を選ぶことで、より良い印象を与えられます。
① 相手からの依頼に応える場合
相手の依頼に対して「対応する」を使うことで、自分が処理できるという能力を丁寧に伝えられます。
[例]
上司:「この件、お願いしてもいいですか?」
部下:「はい、私が責任を持って対応いたします。」
Manager: “May I ask you to take care of this matter?”
Subordinate: “Yes, I will take full responsibility and handle it.”
また、積極的に引き受ける場合には、「受ける」「任せる」「引き受ける」などの表現を使うと、より前向きな印象を与えられます。
[例]
部下:「課長、先日のチームリーダーへの昇格をありがたくお受けいたします。」
課長:「頼もしいね。これからも期待しているよ。」
Subordinate: “Manager, I gratefully accept the promotion to team leader that was offered the other day.”
Manager: “That’s reassuring. I’m looking forward to your contributions.”
上司:「このお客様のクレームが大変で困ったものです。」
部下:「こちらのお客様の対応は、私にお任せください。」
Manager: “This customer’s complaint is quite difficult, and I’m struggling with it.”
Subordinate: “Please leave the handling of this customer to me.”
今回のプロジェクトのリーダーは、私がお引き受けいたします。
I will take on the role of project leader for this time.
② 実行ができない場合
ビジネスシーンでは、「できません」と直接伝えると、非常に冷たく響いたり、相手に失礼な印象を与えたりすることがあります。 そのため、次のような クッション言葉 を使ったり、 代替案を提示 したりすることで、相手に配慮しつつ、前向きな対応を示すことが重要です。
[クッション言葉]
• 誠に恐れ入りますが
• 恐縮ではございますが
• あいにくではございますが
• せっかくなのですが
[文末表現]
• ~かねます
• ~難しいようです
• ~かと存じます
[お詫びの表現]
• ご期待に添えず、大変申し訳ございません
• お役に立てず、誠に申し訳ございません
• すぐにご対応できず、申し訳ございません
[例]
上司:「次のプロジェクトのリーダーをやってくれないかな?」
部下:「せっかくのお話なのですが、現在B社のプロジェクトにも取り掛かっているため、難しい状況です。ご期待に添えず、申し訳ございません。」
Manager: “Would you be able to take on the role of leader for the next project?”
Subordinate: “I truly appreciate the offer, but I am currently engaged in a project with Company B, making it difficult to take on another responsibility. I sincerely apologize for not being able to meet your expectations.”

クッション言葉については
こちらの記事を読みましょう。
③ メールで断る場合
メールで業務を断る際も、単に「できません」と言うのではなく、 理由を添えた柔らかい表現 を使うことで、より丁寧な印象を与えられます。
[例]
件名:〇〇の件について
〇〇様
お世話になっております。
ご連絡いただきました件につきまして、誠に恐れ入りますが、本日は別件があるためすぐには対応いたしかねます。
明日以降であれば可能ですので、ご都合をお聞かせください。
お待たせしてしまい、大変申し訳ございませんが、何卒よろしくお願いいたします。
△△(自分の名前)
上司に確認する場合
上司に対して「できる・できない」といった直接的な表現を使うのは、非常に無礼にあたります。相手の意向を尊重しながら確認するために、「いただけないでしょうか」「よろしいでしょうか」といった婉曲的な表現を用いることが適切です。
[例]
× 部下:「部長、今この書類を確認できますか。」
“Can you check this document now?”
◯ 部下:「お忙しいところ恐れ入ります。いま、お時間をいただいてもよろしいでしょうか。」
上司:「はい、大丈夫ですよ。」
部下:「こちらの書類をご確認いただけないでしょうか。」
Subordinate: “I apologize for disturbing you while you’re busy. May I take a moment of your time?”
Manager: “Sure.”
Subordinate: “Could you kindly review this document?”
このように、依頼や確認をする際には、相手に配慮した言い回しを心がけることで、丁寧かつ円滑なコミュニケーションが図れます。
まとめ
- 「できる・できない」を使うときは場面や状況に応じて、適切な表現を使い分けることが重要。
- 自分が「できる」ことを伝える際は「対応する」、依頼を積極的に受け入れる際は「受ける」「任せる」「引き受ける」などの表現を使うと適切。
- 実行が難しい場合は、直接的に「できません」と伝えるのではなく、クッション言葉や別の表現を用い、相手に不快感を与えないよう配慮する。単に断るのではなく、実行できない理由や代替案を指示し、前向きな姿勢を伝えることが大切。
- 上司に確認をする際は、「できますか」と聞くのは失礼。「いただけないでしょうか」「よろしいでしょうか」などの婉曲的な表現を用い、相手の意向を丁寧に伺うようにする。