JLPT N3文法 – 「〜あげる」と「〜きる」の違い

目次
1. 「〜あげる」と「〜きる」の違い
2. あげる
3. きる
4. 比べてみよう
5. まとめ
6. クイズ
7. 関連記事
8. コメント
Q: 「書きあげる」と「書ききる」は何が違いますか?
どちらも書き終わったということではないんですか?
A: どちらも「書き終わる」という意味ですが、ニュアンスが異なります。
それぞれの違いをこの記事で説明しますね。
あげる (JLPT N3)
[意味]
完成させる・完了させる
[ルール]
[V] 動詞語幹+あげる
[よく一緒に使われる動詞]
書く・作る・育てる・きたえる・みがく・できる・調べる・焼く・炊く
[例]
ようやくエッセイを書きあげました。
I finally finished writing my essay.
子供を3人育てあげた母はすばらしいです。
My mother who has raised three children is truly admirable.
警察が証拠を調べあげて犯人を捕まえました。
The police thoroughly investigated the evidence and caught the criminal.
きる (JLPT N3)
[意味]
全部~する
完全に~する
[ルール]
[V] 動詞語幹+あげる
[よく一緒に使われる動詞]
書く・食べる・使う・言う・信じる・疲れる
[例]
夏休みのレポートを全て書ききりました。
I completed my summer vacation report.
まんがを全部読みきりました。
I read all the manga to the end.
長い距離をなんとか走りきりました。
I managed to run the long distance to the finish.

「〜きる」と「〜ぬく」の違いについては
こちらの記事を読んでくださいね。
比べてみよう
では、これら2つの違いを見ていきましょう。
「あげる」 は「完成すること」に重点が置かれます。過程や努力を強調する役割があり、”よく一緒に使われる動詞” を見ると、時間や労力をかけて完成させたものに対して使われることが多いです。
また、達成感がなくても、一定の過程が必要となる料理に関する動詞ともよく使われます。
「きる」 は「困難や挑戦」が伴う背景をもとに、「最後まで完全にやり遂げる」「残さず全部やる」ことを表します。その困難や挑戦は、精神的な負担がある場合や、量が多くて大変な場合などが含まれます。
また、「完全にある状態になる」という意味でも使われます。
[例]
◯色々な人に助けてもらいながら、ようやくエッセイを書きあげました。
◯色々な人に助けてもらいながら、ようやくエッセイを書ききりました。
I finally finished writing my essay with the help of many people.
⇒ 「あげる」は、話し手が周囲の助けを得ながら努力し、エッセイを完成させたことを強調しています。
「きる」は、はっきりと述べられていなくても、困難や挑戦を乗り越えて最後まで書き上げたニュアンスがあります。
◯おいしいパンが焼きあがったから、みんなで食べましょう。
× おいしいパンを焼ききったから、みんなで食べましょう。
The delicious bread is baked, so let’s all eat together.
⇒ 「焼きあげる」 は、パンがさまざまな工程を経て焼き上がり、完成したことを表しています。
一方、「焼ききる」は「何かを残さずすべて焼く」や「焼くこと自体が困難な場合」に使うため、パンの完成とは合いません。
× 疲れあげた顔をしていますが、大丈夫ですか?
◯ 疲れきった顔をしていますが、大丈夫ですか?
You look completely exhausted. Are you okay?
⇒ 「疲れきる」 は完全に疲れ果てた状態になっていることを表します。
一方、「あげる」 は「過程を経て何かを完成させる」意味を持ちますが、「疲れ」は「何かを作り
上げる」ものではなく、程度が極限に達することを表すため、「あげる」とは結びつきません。
まとめ
[あげる]
- 「完成すること」に重点が置かれ、過程を経て成し遂げた際の達成感が感じられる動詞とよく結びつく。
[きる]
- 「困難や挑戦」を伴いながら、「最後まで完全にやり遂げること」「残さずすべて行うこと」を表す。
- 「完全にある状態になる」という意味も持つ。
クイズ
次の文を読んで、( )から文脈に合った表現を選んでください。
問題をクリックすると答えが表示されます。
A. きる
長編小説を最後まで書ききるのは、とても大変でした。
Writing a full-length novel to the very end was extremely challenging.
*「きる」は「最後まで完全にやり遂げる」という意味を持つため、長編小説のように量が多く、最後まで書き終えることが大変な場合に適切です。
A. あげた
彼はゼロから会社を作りあげたそうです。
He is said to have built a company from scratch.
*「あげる」は、過程を経て何かを完成させることを意味します。「会社を作る」だけでは単に設立したことを表しますが、「作り上げる」を使うことで、完成に至る過程や達成感がより強く伝わります。
A. きる
このマラソン大会はとても過酷ですが、最後まで走りきる自信があります。
This marathon race is extremely tough, but I am confident I can run to the finish.
*「きる」は「困難を乗り越えて最後までやり遂げる」という意味があるため、過酷なマラソンを完走する場合に適しています。
A. あげる
シェフが時間をかけて丁寧にケーキを焼きあげました。
The chef took the time and care to perfectly bake the cake.
*「あげる」は「過程を経て完成させる」ことを強調するため、ケーキのように時間と手間をかけて作るものには「焼きあげた」が適しています。