JLPT N1 文法「〜なくして」と「〜なしに」の違い

目次
1. 「〜なくして」と「〜なしに」の違い
2. AなくしてB
3. AなしにB
4. 比べてみよう
5. まとめ
6. クイズ
7. 関連記事
8. コメント
Q:「〜なくして」と「〜なしに」の使い分けを教えてください
A: この2つの表現は、どちらも「何かがなければ」という意味を持つが、少し違いがあります。
Aなくして(は)B (JLPT N1)
[意味]
AがなければBない
AがなければBが実現しない
[ルール]
[N] 名詞+なくして(は)
[例]
努力なくして成功できないだろう。
Without effort, there can be no success.
親のあたたかい愛なくして子供は育たない。
Without the warm love of parents, children cannot grow up.
彼なくしては、今回の試合には勝てなかったでしょう。
Without him, we wouldn’t have won this match.
メンバーの協力なくしては、成功できませんでした。
Without the cooperation of the members, we couldn’t have succeeded.
AなしにB (JLPT N1)
[意味]
Aがない状態でBできない/困る
AがなければBできない/困る
[ルール]
[N] 名詞+なしに~ない
[例]
パスポートなしに海外へ行けないよ。
You can’t travel abroad without a passport.
この建物は許可なしに入ることができません。
You cannot enter this building without permission.
社長なしにこの集まりは始められないですよ。
This meeting can’t begin without the president.
休憩なしに3時間練習し続けました。
I practiced for three hours straight without a break.
比べてみよう
[Aなくして(は)B]
Bの結果を得るための前提条件をAで示します。
「Aが欠けた状態だとBの結果を得ることが難しい」という意味合いになり、前提となるAが非常に重要であることが強調されます。
[例]
努力なくして成功できないだろう。
Without effort, there can be no success.
⇒ 成功するには努力することが強い条件で、それが欠けると成功できないことを表しています。
[AなしにB]
「AがなければBすることができない」と言いたいときに使われ、Aには一般的な条件、Bにはそれがないと不可能になる状態を表します。
「なくしては」は強調の意味が弱まりやわらかい印象に聞こえます。「なくして」よりも日常的に使われます。
[例]
パスポートなしに海外へは行けないよ。
You can’t travel abroad without a passport.
⇒パスポートがない状態で海外へ行けないということです。
大好きなワインなしにステーキは食べられません。
I can’t eat steak without my favorite wine.
⇒大好きなワインがない状態ではステーキは食べられないということです。
まとめ
[〜なくして(は)]
- 「あるものがなければその実現は難しいだろう」と強く断定したいときに使われる。
[〜なしに]
- 「あるものがなければ、~できない」と言いたいときに使われる。
- 「なくしては」よりも日常的に使われてやわらかい印象になる。
クイズ
次の文を読んで、( )から文脈に合った表現を選んでください。
問題をクリックすると答えが表示されます。
A. どちらでもよい
現代においてテクノロジーなくして人は生きられません。
In today’s world, people cannot live without technology.
*「なくして」だと「テクノロジー」を特定の条件として強調し、「なしに」だと一般的な条件として捉えて実現が不可能なことを言います。
A. なしに
なんの説明もなしにやれと言われても困ります。
I can’t do it if I’m told to do it without any explanation.
*「なしに」が正解です。「なしに」は、あるものが欠けている状態を柔らかく表現し、「説明がないと行うことができない」という日常的な状況を指しています。
A. なしに
「社長、始まりのあいさつをお願いします。社長のあいさつなしに始められませんから!」
President, please give the opening speech. We can’t start without your speech!”
*話し言葉で使われているので「なしに」がふさわしいです。
A. どちらでもよい
本人の同意なくしては、個人情報を教えることはできません。
Without the individual’s consent, personal information cannot be disclosed.
*「なくして」だと「本人の同意」を特定の条件として強調し、「なしに」だと一般的な条件として捉えて実現が不可能なことを言います。
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