JLPT N1・N3文法 「〜さえ」と「〜すら」の違い

目次
1. 「〜さえ」と「〜すら」の違い
2. 〜さえ
3. 〜すら
4. 比べてみよう
5. 最低限の条件を表す場合
6. 接続
7. まとめ
8. クイズ
9. 関連記事
10. コメント
Q: 「〜さえ」と「〜すら」は言い換え可能ですか?
A: 「〜さえ」と「〜すら」極端な事柄を取り出して、何かを述べるときに使われます。
この2つは基本的には言い換えが可能ですが、詳しく見ていきましょう。
〜さえ (JLPT N3)
[意味]
~も(〜もそうなのだから、他も当然そうだ)
[ルール]
[N] 名詞+さえ
[例]
もうアメリカに3年住んでいるのに、レストランで注文さえできません。
Even though I’ve lived in America for three years, I can’t even order at a restaurant.
⇒ レストランで注文することもできないので、他のことは当然できません。
学生の頃は貧乏で、食べ物を買うお金さえありませんでした。
Back when I was a student, I was so poor that I didn’t even have money to buy food.
⇒ 食べ物を買うこともできないので、他のものは当然買えません。
のどが痛くて、水さえ飲めません。
My throat hurts so much that I can’t even drink water.
⇒ 水を飲むこともできないので、他のものを飲んだり何かを食べることは当然できません。
〜すら (JLPT N1)
[意味]
~も(〜もそうなのだから、他も当然そうだ)
*良くないことに使うことが多く、話し手の驚きや意外な気持ちが含まれます。
[ルール]
[N] 名詞+すら
[例]
もうアメリカに3年住んでいるのに、アルファベットすら読めません。
Even though I’ve lived in America for three years, I can’t even read the alphabet.
⇒ アルファベットを読むこともできないので、他のことは当然できません。
話し手はこの事実を残念に感じています。
今日は忙しすぎてトイレに行くことすらできませんでした。
Today, I was so busy that I couldn’t even go to the bathroom.
⇒ トイレに行くこともできないので、他のことは当然できません。
話し手はこの事実に驚いています。
祖父は海外はもちろん、となりの県にすら行ったことがありません。
My grandfather has never been to a foreign country, let alone a neighboring prefecture.
⇒ 近隣の県に行ったこともないので、他の場所へは当然行っていません。
話し手はこの事実に驚いています。
比べてみよう
では上の例文を使って「〜さえ」と「〜すら」を比べてみましょう。
[例]
もうアメリカに3年住んでいるのに、レストランで注文さえできません。
もうアメリカに3年住んでいるのに、レストランで注文すらできません。
Even though I’ve lived in America for three years, I can’t even order at a restaurant.
もうアメリカに3年住んでいるのに、アルファベットさえ読めません。
もうアメリカに3年住んでいるのに、アルファベットすら読めません。
Even though I’ve lived in America for three years, I can’t even read the alphabet.
このように、これらの例文は言い換えが可能ですが、使い分けるための大事なポイントは話し手の気持ちになります。「〜すら」は特に極端な事柄を取り出して話すため、話し手の意外な気持ちや驚きの気持ちを含みます。
つまりもうアメリカに3年住んでいるのに、「レストランで注文すらできません」や「アルファベットすら読めません」は、アメリカに3年住んでいるからレストランで注文することやアルファベットを読むことはできて当然だろうと思われるのに、できていない意外性や驚きが表れています。
また「〜すら」は「〜さえ」に比べて否定的な意味合いが強くなるので、話し手にとって「レストランで注文できない」ことや「アルファベットが読めない」ことを非常に残念に感じていることがわかります。
では他にも「驚き・残念、意外な気持ち」などを含んだものを見てみましょう。
[例]
え、この時代にケータイすら持ってないの!?
Wow, you don’t even have a mobile phone in this day and age!?
⇒ 聞き手がケータイを持っていないことに話し手が驚いています。
忙しくて寝る時間すらないです。
I’m so busy that I don’t even have time to sleep.
⇒ 寝る時間がなくて残念な意味合いを含みます。
この問題は子どもですらわかるのに、夫はわからないみたいです。
Even a child understands this problem, but my husband doesn’t.
⇒ 子どもができるから夫もできると思っていたけど、そうでなかったという話し手の意外な気持ちを表しています。
最低限の条件を表す場合
例えば(最低限)条件が満たされて、あることができる場合は「〜さえ」を使わなければなりません。
「Nさえ~ば・Nさえ~たら」のように条件形と一緒に使われるので覚えておきましょう。
[例]
アルファベットさえ読めれば、アメリカの生活が楽になるでしょう。
If only you could read the alphabet, life in America would be easier.
⇒ アメリカの生活が楽になる最低条件は「アルファベットが読める」ことを表しています。
母の許可さえもらえれば、留学ができます。
If only I could get my mother’s permission, I could study abroad.
⇒ 留学ができる最低条件は「母の許可」です。
接続
「〜さえ」と「〜すら」は、どちらも前に助詞「で」がつき、「〜でさえ」「〜ですら」とすることができます。
この場合の助詞「で」は、つけてもつけなくてもどちらでも構いません。
つける場合は主格、もしくは数字につく場合が多いと覚えておきましょう。
[例]
最近の子供の名前は、日本人でさえ読めない漢字の名前が多いです。
最近の子供の名前は、日本人ですら読めない漢字の名前が多いです。
Recent children’s names often include kanji which even Japanese people can’t read.
のどが痛くて、水一滴でさえ飲めません。
のどが痛くて、水一滴ですら飲めません。
My throat hurts so much that I can’t even drink a drop of water.
そして、「で」以外の助詞に接続することもできますが、「は・が・を」に接続することはできません。
[例]
× 事故でけがをしてしまい、歩くことがすらできない状態です。
I’m in a condition where I can’t even walk due to the injury from the accident.
× 忙しくて寝る時間はさえありません。
I’m so busy that I don’t even have time to sleep.
× 彼は自分の名前をすら書けません。
He can’t even write his own name.
○ 引っ越しのことは親友にさえ話していません。
I haven’t even talked to my best friend about the move.
まとめ
- 「〜さえ」と「〜すら」は極端な例を表すが、より極端な例や話し手の意外な気持ちを表すときは「〜すら」が使われる。
- 最低条件を表す場合は「〜さえ」だけ使うことができる。(「Nさえ条件形」の形で覚えよう)
- 前に「で」などの助詞をつける場合も多いが、「は・が・を」に接続することはできない。
クイズ
この文章は正しいですか?◯か×で答えましょう!
問題をクリックすると答えが表示されます。
A. ○
Tom knows many Japanese proverbs that even Japanese people don’t know.
*日本人は主格なので「で」がつき、トムさんがそれを知っている驚きを表しているので正しいです。
A. ×
わたしは日本の食べ物が苦手で、とうふすら食べられません。
I’m not fond of Japanese food, and I can’t even eat tofu.
*「すら」の前に助詞「が」をつけることはできないので間違いです。
A. ○
Please come to tomorrow’s party if Tanaka san is okay with it.
*「田中さんがいいと思う」ことがパーティーに参加する最低条件なので、正しいです。
A. ×
雨さえ降らなければ明日ハイキングに行きましょう。
Let’s go hiking tomorrow if it doesn’t rain.
*「〜さえ」を使って最低条件を表す場合、「さえ〜ば」か「さえ〜たら」と言います。この文章では「〜なら」と言っているので間違いです。
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